K
「たまたませんせーの大学見てみたいって言ったら、加藤も付いてきたの。ねっ」
そう加藤に賛同を求めたが、もうそれくらいでやめてやってほしい。
加藤は今日この日を楽しみにしていただろうに。
「ところでこの研究室、何を研究しているの?」
閑散とした展示ブースを眺めて、加藤が不思議そうに聞いた。
研究室の今までの実績や里村教授の年表、特許取得した際の論文、現在の研究テーマについて画像や図を用いて説明している。
正直、最後の研究テーマ以外は何年も使い古した展示物であった。
誰が見ても「退屈な展示」だ。
「先生、微生物が何とかとか言ってたよね」
「そうそう。応用微生物学。ひたすら微生物について調べて調べて、調べまくる研究だよ」
加藤はともかく、関根は文系のはずだった。
こんな研究室の展示に興味があるはずがない。
「なんだか、難しそうだね」
「まあ、高校生には難しいかな」
「あ、バカにしたー」
「酷ーい」
そう言いつつも、二人はくすくすと笑っている。
塾の講師の大学までわざわざ来てくれるなんて、結局この二人は俺のことが結構好きなのだ。