K
「ねえ、何か面白いショーとか、イベントないの?」
加藤は理系なこともあったし、難しい展示物を一通り見て回っていたが、関根は早々に俺の元へ戻ってきた。
手にはパンフレットを持っている。
「そうだなー、盛り上がるのはやっぱこの辺じゃないか?」
俺はパンフレットの地図に記載のあった、中庭の出店が並ぶ一帯を指差す。
「そこ、通ってきたよ。すごい押し売りされそうになってちょっと嫌だった」
「ああ、そう。ごめんね」
確かに、こんな可愛らしい少女がいたら格好の的になる。
大学の文化祭では質の悪い勧誘も少なくはない。
加藤も気が気でなかっただろう。
俺は心の中でエールを送った。
「ああ、このステージで友達がバンドをやるよ」
友達、というのはもちろん幸治のことだった。
メインステージで昼過ぎにライブをするから、見に来てくれとの連絡があったのを思い出す。
「へえ、かっこいい?」
「おう、ボーカルが」
「そうなんだっ、加藤〜後でみにいこ」
「先生は?」
「俺は後夜祭で見るから。ここの当番もあるし。二人は行ってきな」
それに加藤の邪魔をしたくない。
若者の恋路は邪魔するものではない。
「なんだ、つまんないの」
と、また関根が口を尖らせた。
「あ、これ面白そう」