K


彼女が失踪したという連絡を聞いてから、すでに2週間程度たっていた。


諦めのような気持ちも湧いてくる。


窓の外を眺める。
夏の陽光が、青々としたイチョウの葉を照らしていた。


締め切った窓の先から何かのイベントの歓声のようなものがうっすらと聞こえた。


今年のグランプリの発表が始まったのかもしれない。




「あの、すみません」

「え?」

「こちらの研究室の学生さんですか?」



先程関根たちと入れ替わりで入ってきた男性だった。

三十代半ばだろうか。


「ええ、そうですが何かご質問ですか?」


同業者だろうか。

その割には、スーツなどを着て身なりがきちんとしている。
助教授や助手など、そういった類かもしれない。


「ああ、そう。聞きたいことがあるんです」

「何でしょうか。と言っても、私の研究ではないものもあるので全てに正確にお応えできるかわかりませんが…」


昔の研究内容に関してはさっぱりだった。

同じ研究室といえど、やっていることは結構違う。




「ああ、違うんです。私、捜査でここに参りまして」


そう言って彼は、いつかも見た、黒っぽいパスケースを開いて差し出した。



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