K
「まさか、百合さんまで…?!」
思わず立ち上がる。
一瞬、あの、クリーンベンチの中にいる百合さんを想像する。
ぶわり。
いやな汗がにじみ出る。
彼女と、目が、あった。
「すみません、落ち着いてください」
臼井に肩を掴まれる。
その衝撃にびくりとする。
「彼女はまだ被害にあったというわけではありません」
「まだって…」
「見つからないのです」
臼井の表情は、真剣で深刻さを物語っていた。
「職場にも、友人にも誰にも告げずに突然、失踪しました。前日までは、いつもと変わらない様子だったと聞いています」
「噂でも、聞いています。彼女、この学校では有名でしたから…」
しゃべりながら、元の椅子に腰掛ける。
軽いめまいがした。
臼井は手帳を開いて何かを書き込み始めた。
「そのようですね。職場でも優秀だったと聞きました」
才色兼備な女性。
それが、百合だ。
「何か、人間関係でのトラブルや最近変わったことはありませんでしたか」
「いえ、そのようなことは特に」
「そうですか。男性関係なども、何か聞いてはいませんか」
そう聞いて、あの澄ました男のことを思い出す。
まさか。
「刑事さん、まさか螢を疑っているわけではないですよね」