K
「ケイ…ああ、唐島さんのことですか。数ヶ月前まで、恋人だったようですね」
「確かに、二人は付き合っていました。けど、螢は関係ありませんよ」
「いや、決して疑っているわけでは」
螢の名前が出て、俺は苛立ちが隠せず臼井の言葉を遮る。
「別れたのは彼女が消える何ヶ月も前です。しかも、お互いに納得した上でした。それからも、友人としてみんなで飲みに行ったりしましたし。百合さんは、少し落ち込んでいたけど…けど、こんなことでいなくなるような人じゃない。今回のことに、螢は関係ありませんよ」
ひとしきり、言いたいことを言うと、ふうと息をついた。
「承知してます。唐島さんから、伺っています」
「え、螢にもあっているんですか?」
意外な答えに、拍子抜けする。
いや、意外ではないか。彼女に近しい人間の順で行ったら妥当だ。
「はい。数日前に同じように話を聞きに行きましたよ」
「そ、そうでしたか」
「仲がいいんですね」
「まあ、高校も一緒なんで…」
「そんなに心配してもらえて、いい友人じゃないですか」
笑顔でそう言われて、なんとも言えない気持ちになる。
ムキになったのが、バカみたいだ。
すぐに暑くなるのは、俺の悪い癖でもあった。