K
松村沙雪は美人だ。
「それより、これほんとにおいしい。さすが陽世子ね」
そう言っておいなりさんを頬張る。
「ありがと、甘ーくおあげをにて、たっぷりごまを入れてみました」
「さすが栄養士。あーわたし、陽世子の婿になりたい」
「やめろよ、陽世子を変な道に進めるな」
「香西よりはましでしょ」
美人で、気が強い。
そしてその外見とは似合わず、俺たちと同じ里村研究室の学生だ。
もともと高校時代から仲がよかったのが螢、陽世子、俺の三人で俺たちの研究室に顔を出すうちに沙雪とも仲が良くなった。
沙雪は俺たちの学科では異質だった。
そもそもあまり女子のいない学科ではあるが、沙雪のような華やかな女子は沙雪以外にはいなかった。
それもそうである。
広いキャンパスで奥に位置している俺たちの研究室。
ひたすら手のひらほどのシャーレの中の点を数える作業。
膨大な課題。
むさくるしい男だらけの授業。
普通の女の子は、選ばない学科だ。
四年間、沙雪はがんばったと思う。