云えないから。
出会い

初めての男

決して要領は良くないが、目標への達成意欲は半端ない。
それが、楠 菫鈴(くすのき すみれ)の性格だ。
菫鈴は、努力の甲斐あって、希望の大学に推薦で合格をし、残りの高校生活をゆっくり満喫していたが、ダラダラしている娘を見兼ねた母親が、菫鈴を自動車学校に通わせるべく、手続きをしていたのだ。
ある日、学校から帰った菫鈴は、リビングのダイニングテーブルの上に、無造作に置かれていた自動車学校のパンフレットに気付く。

「自動車学校?」

夏に18歳の誕生日を迎えていた菫鈴は、免許資格があることを思い出した。

「明日、5時にサンライズマンションにバス来るってよー。」

サンライズマンションとは、つい最近、建ったばかりの、菫鈴の家の向かい側のマンションのことだ。

「また勝手に…。」

菫鈴の母親は、日頃から勝手に決めて、行動してからの事後報告ばかりしていた。
< 1 / 14 >

この作品をシェア

pagetop