云えないから。
菫鈴が真顔で急にそんなこと言うので、謎めいた顔を一瞬見せたが、すぐに、軽く笑った。

「会ったよ!会った!忘れちゃった?」

と返された。
どうやら、勘違いをしたようだ。

「じゃ、お前はそこ座れよ。」

ツンデレも阿吽の呼吸で、指示した。

「俺、和泉卓也(いずみ たくや)で、チャラいアイツは、青山(あおやま)。んで、こいつは、白石(しらいし)ね?」

慣れたように隣に座りながら、自己紹介と友人自己紹介をしてきた。

「私は、菫鈴で…あっちは眞子…。そして、もう一人は南美(みなみ)。」

菫鈴は、さっき話しかけたことを後悔しつつ、自己紹介に友人紹介をした。
完全に、和泉卓也に興味あるように思われている。

眞子に目で合図を送った。
この流れを止めるためだ。

「ところでさ、皆は高校どこなの?」

眞子は、仕方ないとばかりに助け舟を出した。
今日のコンパは、周りにまわってきたもので、誰も直接の知り合いはいなかった。

「そっちは、桜女子でしょ?
俺ら、東(ひがし)高!」

菫鈴たちは、桜蔭(おういん)学園という、私立の中高一貫に通っている。
東高とは、県立の東高校だ。
市外にある為、あまり接点はなかったが、菫鈴は小学校の頃の同級生で、中学の頃に片思いした人が通っていたことを思い出した。

名前を挙げると、微妙な雰囲気が流れて、曖昧に返された。

「ね、皆は大学とか行くの?」

菫鈴は、掘り下げても仕方ないので、話を変えようとした。

「アイツは、東大だよ!」

ツンデレの青山がふざけながら言った。
東高からは、どーみてもありえないので、菫鈴達は冗談だとブーイングした。

「マジだってば!」

青山は、今度は最もらしく言った。

「ほんとだよ。だって、そいつ、昂明(こうめい)高校だし。」

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