殺人鬼械の痛み





春奈はスッと立ち上がり、指示された箇所の英文を、正しい発音でスラスラと流暢に朗読した。


「Great! とても綺麗な発音でしたよ」

「長山、凄えぇ~」

「春奈、格好良い!」


教師の賞賛に続き、春奈を誉める歓声が、クラス中に飛び交った。




その日の体育の授業も、プールだった。
その日のプールも、春奈はジャージ姿で、プールサイドの端に座って見学していた。
水中で運動をしていた静華は、ふと顔を上げると、視界に春奈が写った。
――――別にプールの授業を見学する人は、珍しくも何ともない。体調が優れない人も、水着を忘れた人もいるだろう。
ただ、静華の目には、それが何だか不思議に思えた。
……考えてみたら、春奈がプールの授業をうけているのを、静華は見た事が無かった。




その日は午後に、美術の授業もあり、内容は彫刻だった。
春奈の隣りの席に座っていた庄野愛(ショウノ アイ)は、誤って手を滑らせ、左手に彫刻刀で大きな切り傷が出来た。
愛の切り傷は意外と深く、机にみるみる血の染みが広がっていった。


「……えっ? うわっ、ちょっ」


春奈は愛の傷を見て、驚いたように何回も瞬きを繰り返す。





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