殺人鬼械の痛み
春奈の手からカタンと、彫られていた木板が落ちた。
春奈はそのまま木板を拾い上げる事も無く、勢い良く立ち上がって美術室を飛び出した。
誰もが愛の出血に気を取られる中、翼だけが春奈が美術室を飛び出してしまった事に気付いた。
「長山!」
翼の声に反応し、春奈が居ない事に気付くクラスメート達。
翼は立ち上がり、美術室を出て走り出した。
春奈は階段に座り込んで、頭を抱えてガタガタと震えていた。
愛が怪我をして、机に少しずつ広がっていく血の染みの景色が、春奈の頭にこびりついて離れない。
それと同時に、春奈の頭に、沢山の人が撃たれて、傷口から血を流しながら倒れていく景色が、ふと浮かんだ。
それに怯えたのか、春奈の震えが、さらに大きくなる。
そこに、キョロキョロとあたりを見回しながら、翼が近寄ってきた。
春奈を見つけた翼は、そのまま真っ直ぐに春奈に向かってくる。
「……長山、探したよ。美術室に戻ろう」
その声に振り返った春奈は、翼を見上げる。
「……嫌、何か怖い……」
「大丈夫だよ。庄野なら止血して、保健室に行ってるだろうし。長山が急に出て行っちゃったから、皆心配してるし」
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