殺人鬼械の痛み

2029.6.○○






その翌日。
翼はいつものように登校してきて、いつものように机の中に教科書を移していた。
全ての物を移動し終え、一息ついている翼に、春奈が近寄ってきて声をかけた。


「おはよう、山本君。昨日はどうもありがとう」


春奈の声に反応した翼は、春奈を見上げる。


「おはよう。昨日の? ……ああ、別に良いよ」


春奈は翼に御礼が言えた事に安心したのか、微笑んで立ち去ろうとする。


「そういや、長山」


翼の呼びかけに、春奈は振り返った。


「昨日のだけど。何で急に飛び出したりしたんだ?」


翼の質問に、春奈は首をかしげ、少し考える。


「……よく分かんない。何か、血が怖かった?」

「ふぅん? そんな事もあるのか……」


春奈の返答に、翼までも首をかしげた。




その日の体育の授業も、内容はプールだった。
気温が高い事もあって、生徒達は気持ち良さそうに泳いでいる。
そんななか、プールサイドの端では、ジャージ姿の春奈と静華が、並んで座って見学していた。


「ねえ、春奈っていつもプールの時は見学してるよね。何で?」


静華は前から疑問に思ってた事を、思い切って聞いてみる。





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