殺人鬼械の痛み

2029.7.1






学校からの帰り道、春奈は本を読みながら歩いていた。
本にあまりにも集中していた春奈は、電柱が目の前にある事にも気付かず、そのまま電柱に頭をぶつけた。

突然、春奈の脳内に、××遊園地の観覧車が回っている光景が浮かんだ。


「今の、何処……?」


春奈は痛そうに頭をさすりながら、見た事も無い筈の観覧車の光景を不思議に思って、頭をかしげた。




その日の夜、静華は自室でパソコンに向かっていた。
静華は動画投稿サイトで、『2021・2・14 ××遊園地』というタイトルのついた動画を観ながら、黙って涙を流していた。
その動画は先日、翼が観ていた動画と、全く同じ動画だった。




同じ頃、翼は自室で、遊園地で唯と一緒に写った幼き頃の翼の写真を眺めていた。
翼はその横に置いてある、血の染みがついてボロボロになったヌイグルミを手に取り、思い切り抱き締める。


「大きくなったら結婚しようね」


そんな唯の声が聞こえた気がして、翼は強く目を瞑った。
翼の目から、涙が一筋零れ落ちた。




また、同じ頃。
浩平は研究室で、パソコンにデータを打ち込んでいた。その横では春奈が椅子に座って、足をブラブラさせて遊んでいる。





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