殺人鬼械の痛み





静華は麗衣の反応に苦笑する。


「もう随分経つし、他に兄弟もいないから、あんま話さないしね」

「ねえ、静華」


静華は春奈が声をかけてきたのを、シカトした。


「……静華?」


静華は再び、春奈をシカトした。




その日の昼休み。
ある女子生徒が中庭で、何回も"掌に人の字を書いて、飲み込む"という行動をしていた。
よくある、緊張を緩和するおまじないだ。
女子生徒の緊張を知ってか知らずか、翼が歩いてきた。


「どうも。待たせた?」

「……全然、待ってないよ」


女子生徒は緊張しながらも、首を強く横に振る。
翼は女子生徒に笑いかけた。


「そっか、良かった。……話って何?」

「……あ、あの! ……前から山本君が好きでした。付き合って下さい!」


翼は驚いて目を見開き、腕を組んで少し考える。


「……気持ちは本当に、とても嬉しいんだけど……ごめんなさい。俺には、二度と逢えない好きな人がいるんだ」


女子生徒は、自分が振られたショックよりも、翼の言葉に思わず聞き返す。


「二度と逢えない……?」

「詳しくは聞かないで。本当にごめん」


そう言って、翼は深々と頭を下げた。





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