殺人鬼械の痛み
静華は待たされた怒りからか、実の兄を殺された恨みからか、ボールが春奈の頭にぶつかるように、わざと春奈の頭部めがけて打ち返した。
静華の狙い通り、春奈の頭にボールがぶつかり、春奈は倒れた。
「え! 長山、大丈夫!?」
「春奈、いま先生呼んでくるから!」
周りでテニスをしている生徒達が倒れた春奈に気付いて駆け寄ってくるが、ボールをぶつけた本人である静華は動かなかった。
少し離れたコートで練習していた翼は、春奈が倒れた事に気付いたが、それでも動こうとはしなかった。
その夜、春奈は自室で、考え事をしていた。
英語の課題をしていた静華に声をかけると、「いらない。ってか、気が散るから出てって」と追い払われてしまった事。
廊下で大量の教材を一人で運ぶ翼を見かけ、手伝いを申し出ると、「いらねぇ、一人で運べる」と、目も合わさず邪見に置いてかれてしまった事。
転校当初に静華が優しく話しかけてくれたり、愛の怪我を見てパニックになった春奈を翼がわざわざ探しに来てくれた事を考えると、春奈にはどうしても二人の心変わりが納得出来なかった。
「二人とも、どうしちゃったのかな……?」
春奈は静華と翼の心変わりを寂しく感じ、そっと溜め息を吐いた。
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