殺人鬼械の痛み
――そんな九年前のバレンタイン、当時は五歳だった俺――山本翼(ヤマモト ツバサ)は母さんと、今は亡き幼馴染で同い年だった唯(ユイ)と一緒に、遊園地に遊びに来ていた。
ヌイグルミが好きだった唯は、お気に入りのキャラクターのヌイグルミを見つけて、ゲームコーナーのクレーンゲーム相手に格闘していた。
「あー! また取れなかった~」
何回目かの挑戦に失敗し、肩を落とす唯に、俺は聞いてみた。
「ヌイグルミ、そんなに欲しいの?」
「うん。可愛いー、欲しいー!」
俺は百円玉の一つだけ入れて、クレーンゲームを操作した。
上手い具合に、唯の欲しがっていたヌイグルミは簡単に取れたので、そのまま唯に渡した。
「唯ちゃん、あげる」
「翼君、本当に? うわぁ、ありがと!」
ニコニコしてる唯を眺めていたら、急に抱きつかれた。
唯は元からボディタッチが多い子だったけど、俺がそれに慣れる事は結局出来ず、この時も抱きつかれたのが凄く恥ずかしかった。
「唯ちゃん……、ちょっと……。あ、そろそろショー始まっちゃうよ」
楽しみにしてるショーに上手い言い訳を見つけた俺は、そのまま歩き出す。
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