殺人鬼械の痛み
翼は、噂話をしながら作業を続けているサッカー部員達を見る。
たぶん、長山のコトだろう。翼はそう確信した。確信したが、何も言わない。
翼が幼い頃に××遊園地で見た、春奈がマシンガンを連射する光景が脳内に甦る。
その銃弾に唯は撃たれ、そのまま亡くなってしまった。
「大きくなったら結婚しようねって、約束したじゃん」と言い残して。
翼にとってはそれが全てで、"超怖い"もヘッタクレも無かった。
「翼、いつまでノンビリしてんだ? 次のマット片付けないと、いつまで経っても終わんねーんだけど」
「あ、ごめん。やるやる」
一緒にマットを片付けている部員に声をかけられた翼は、慌てて次のマットの片付けに移った。
ボケッとしてても作業は終わらないし、何も変わらない。翼は深呼吸して、もう一回伸びをして、気持ちを切り替える事にした。
しかし、どんなに翼が気持ちを切り替えようと頑張っても、翼は唯の残した言葉に捕われ続けている。
翼が気付かないまま唯の言葉に捕われ続けたまま、翼は次のマットを巻き続けた。
「大きくなったら結婚しようねって、約束したじゃん」という唯のあの時の言葉が、翼の耳に響いた。
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