殺人鬼械の痛み






ひょっとしたら、俺はこの時、少し顔を顰めていたかもしれない。それが悔やまれる。


「もう、翼君は照れ屋さんなんだから~」


俺が歩き出したにも関わらず、唯は俺に甘えたまま歩く。正直に言うと歩きにくいったら無いんだけど、相手が唯だし振り払えない。
ダラダラと歩く俺達の後ろを、当時は三十二歳だった俺の母さんが苦笑しながらついてきた。


「唯ちゃんは本っ当に分かっているわね~。翼は小学校に行っても友達できない気がして、おばさん心配なのよ~」


母さんの言葉に、唯が"大丈夫"というように、胸をポンと叩いて力説する。


「でも翼君なら大丈夫だよ! さっきもヌイグルミ取ってくれたし、優しくて格好良い唯の自慢のダーリンだもん!」

「唯ちゃんっ……」


凄く恥ずかしく感じてる俺に、唯は微笑みかけてきた。


「だって翼君、"大きくなったら結婚しようね"って、こないだ約束したじゃん」

「唯ちゃんが一緒なら、おばさんも安心だわ」


唯の言葉に母さんまでもが笑顔になって、俺は本当に恥ずかしくて仕方無かった。
思わず顔が赤くなってしまった事が分かって、それは今でも本当によく覚えている。


「……ったく、これだから女は……」





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