殺人鬼械の痛み





結果的に、当時の俺は女二人には敵わずに、悪態を吐く事しか出来なかった。
こんなやりとりも、今になってしまえば、懐かしさ以外の何も感じない。


――――随分後になってから知ったんだけど、この日の遊園地のショーを、後に中学で同じクラスになる国島静華(クニシマ シズカ)も、母親とお兄さんと一緒に観に来ていたらしい。
国島のお兄さんは浩太(コウタ)といって、野球が大好きな小学一年生だったそうだ。


「ねー、お兄ちゃん、まだー?」

「知らねぇよ!」

「もー、二人とも喧嘩しないの。悪い子の所には誰も助けに来てくれないわよぉ」


国島と浩太さんは、こんな感じで言い争いはするものの、基本的には仲が良い兄妹だったようだ。


「じゃあ静華、良い子にするー!」

「俺も」


当時の国島は今みたく捻くれてなく、とても素直な子だったらしい。


「ほらほら、始まっちゃうわよ」


――ようやく俺達は、ショーの会場に辿り着き、たまたま空いていた国島達の斜め後ろの席に座った。


「間に合って良かったね」


ワクワクしてる唯の声。
ゲームコーナーからの移動にこんなに時間がかかったのは、唯が俺にベッタリと甘えてきて動きにくかったのが原因なんだけど、俺はそれを敢えて言わなかった。





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