殺人鬼械の痛み
「ほら、唯ちゃん。始まっちゃうよ」
その日のショーは、当時大流行して社会現象になっていた、ヒーロー物アニメの出張ショーだった。
――それでも俺は、流行ってたアニメの内容より、連れて行ってもらったショーの内容よりも、唯のコトをよく覚えている。
ショーは楽しかったし、面白かったと思う。
…正直に言うと、あまり覚えてない。
ただ、その直後に起きた事は今でもよく覚えてるし、未来永劫忘れる事は無いんじゃないかと思ってる。
ショーが盛り上がる最中、突然バンという音が聞こえた。
バン! なんて甘い物じゃない、バババババ…!! という感じ。
「何だ今の?」
音の方に振り向くと、無表情の女が、黒光りする細長い物を、肩に担いでいた。
――今なら、女が長山春奈(ナガヤマ ハルナ)で、ヤツがマシンガンを担いで連射していたんだと分かる。
俺みたいに様子を見た人達が、次々と女に撃たれて、倒れていった。
「ねぇ翼君、あれ何なのかな?」
俺の方に振り向いた唯の肩に銃弾が当たり、唯は倒れて血を吹き出した。
さっき俺が渡した唯のヌイグルミが、唯の血で赤く染まっていく。
「唯ちゃん!」
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