殺人鬼械の痛み





俺達の斜め前の席では、浩太さんが左胸を撃ち抜かれたそうだ。
「お兄ちゃん!」という悲痛な叫び声が聞こえた。
そのまま、浩太さんは持っていた野球ボールを取り落としたらしい。

――――突然、マシンガンの連射が終わった。
マシンガンを担いでいた女は、不思議そうに銃口を覗き込んでから、何事も無かったように無表情で去って行った。

俺は、血がドクドクと流れ続ける唯の傷口を押さえて、


「唯ちゃん、痛いよね、痛いよね。……死んじゃったりしないでね?」


と聞いた。
傷口を押さえた俺の手は、唯の血でみるみる真っ赤になっていって、俺は心配で仕方無かった。
にも関わらず、唯は俺に、少しだけ微笑みかけてきたんだ。


「大丈夫だよ、"大きくなったら結婚しようね"って約束したじゃん」


こんな状態なのに、少しも未来を疑わない唯の言葉に、俺は何だかやりきれなくなったのを覚えてる。
俺の腕は、唯の傷口から溢れる血で、赤くなっていた。
そして当然のように、唯の足元には血溜まりが出来ていた。


「……翼君の手、温かいよ……」

「唯ちゃん……」


唯が、ゆっくりと、その目を閉じた。
唯の持っていたヌイグルミが血溜まりに落ちて、赤く染まる。


「唯ーーっ」





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