殺人鬼械の痛み
2029.5.5
ゴールデンウィークの最終日、五月五日。
中学三年生になった十五歳の翼は、勉強机の上に飾られた写真立てを手に取って、その写真を眺めていた。
翼が見ている写真は、八年前のバレンタインに遊園地で撮った、翼が唯と一緒に写っている最後の写真だった。
写真立てが置いてあった場所の横には、あの日の遊園地で唯の為に取った、血で汚れてしまったヌイグルミが置いてあった。
同じ時間。
同じように中学三年生になった十四歳の静華は、あの遊園地の大量殺戮で亡くなった兄の浩太の、遺影が置かれた小さな仏壇に向かって、静かに手を合わせていた。
そして、また同じ時間。
浩平は研究室で、改造が終わった春奈の、最終チェックをしていた。
チェックが終わったのか、浩平は満足そうに頷き、近くに置かれたパソコンのキーを叩いた。
すると、シェルターに横たわっている春奈が、ゆっくりと目を開ける。
「……ん……?」
浩平は素早く目を走らせて、春奈の動きを確認する。
「初めまして、春奈。気分はどう?」
春奈は不思議そうに腕を動かす。
「……何か、気分良いよ。えっと…?」
「僕は長山浩平、君のお父さんだよ」
浩平はそう言って、春奈に微笑んでみせた。
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