その恋愛は、恋愛ですか?
 恋次さんは呆れたような、はぐらかすような、バカにしたようなニュアンスを込めてそう言った。


 私はたぶん、彼をすごい形相で睨んでしまっていたと思う。



「まあ、やめよう。そもそも僕は他人の恋愛を断じるのが好きじゃないし。
断じたところではいそうですかと納得できるもんじゃないだろうし。
もっと君にとって建設的な話をしよう。ごめんね、僕はなかなか口下手でね」



 私は、恋次さんに露骨な敵意を向けてしまったことを恥じた。


 自分から無理やり相談しておいて、気に喰わないと敵意を向ける。


 そんな子供じみた理不尽を、恋次さんは流してくれたようだった。


 ちょっと変わった人だけど、そのあたりはやっぱり大人の人なんだ。



「一緒にいるとき、彼は全く自分に興味をしめさないっていってたけど、まずは対等に話をする機会を作ろうか」


「そんなこと、できるんですかっ?」


「簡単な話さ、月曜日まで君は―――僕の家にお泊りするのさ」


「なっ!?――――」



 速攻で葉子先輩が恋次さんの後頭部を平手打ちした。


 ありがとうございます、先輩。


 もう一発くらい入れてやってください。



「痛いじゃないか! ―――だが、それがイイ」


 
 恋次さんは後頭部をさすりながらうっとりとしていた。


 変態だ。



「じゃあもう一発いっとく?」



 先輩が今度は拳を握りこむと、恋次さんは「遠慮します……」と言って身を縮めた。



「まあでも、レンさんが言いたいことは分かったわ。ようするに、目には目をってことでしょう?」



 先輩がため息交じりにいうと、恋次さんは穏やかに笑って頷く。



「そゆこと」



 と言われましても……どゆこと?


 私が指を加えていると、先輩が察して説明をしてくれた。



「ようするに、あんたもどっかにお泊りして、彼氏に心配させてやるってことよ」


「そ、そんなこと……。あんな辛い思い、彼にはしてほしくない……です」


「彼氏は少なくとも、あんたがこんなに心を痛めてるなんて思ってないわよ。だから、それがどれほど相手を傷つけることなのか、教えてやるのよ」
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