その恋愛は、恋愛ですか?
 自分には全くない発想だった。


 けれど、先輩や恋次さんに言われると、なぜその発想がなかったのかと不思議な気すらしてくる。



「や、やってみたいです」


「決まりね。じゃあ月曜まで、うちのアパートにお泊りしよっか」



 先輩はそう言って、頭をなでる。


 少しだけだけれど、ワクワクしてしまっている自分がいた。


 彼はきっと日曜の昼間に帰ってきて、私がいないことに気が付く。


 そして、夜になっても帰ってこない私を心配するけれど、日頃、スマホを鳴らすなって言ってる彼は、私に連絡をしにくい。


 ちょっとだけ仕返しをしてやりたいって気持ちが、ふつふつと湧き上がり始めた。



「まあ、本当の狙いは心配させること、じゃないけれどね」



 恋次さんはまたもったいぶった言い方をしていたけれど、今回は丁寧な説明を付け加えてくれた。



「彼氏の反応を見るんだよ。ケースは3つ。
まずは、彼氏の浮気がただの浮気であった場合、多分彼氏は焦る。
きっと君に、どこへ行っていたのかと、細かく尋ねてくるだろう。
なにせ、ただの浮気って話なら、本命は君なわけだからね」


「そうですね。
きっとびっくりすると思います」


「けれど、彼氏自身も他の女性の家にお泊りしていて、なおかつそれを正当化しているわけだから、君に対して強くは出れないはずだ。
だから、本当にそれとなく、探る様に聞いてくる感じだと思うよ。
なにより、浮気をしている、していないなんて話がエスカレートしたら、どこかからボロがでて、自分の浮気もばれてしまいかねないわけだからね」


 なるほど、分かります。

 確かに、私のお泊りを責める権利は、圭介にはないはずだもんね。

 探る様に聞いてくる、か……。

 私は胸の中でメモを取る。
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