その恋愛は、恋愛ですか?
「二つ目は、彼氏は誰かと肉体関係があるわけじゃなく、友達と遊んで回っていただけってケース。
田辺さんとも、一緒に一晩明かしただけで、特にそれ以上は何もなかったって場合だ。
この場合、彼氏は堂々と君を責めてくるだろう」


「か、覚悟はしておきます。
でも、彼もどこかにお泊りをしていることに変わりはないわけですから、やっぱりそんなに責められないんじゃあ?」


「ううん。それは違う。
彼はきっとこう思う。
自分は君の面識のあるサークル仲間の家に泊まっている、あるいは朝までどこかの店で騒いでいただけだから後ろめたいことはないけれど、君がどこの誰とも知れない人の家に泊まるのは許せない。ってね」


「なんだか理不尽な話ですね。
私からすれば、彼がサークル仲間の家に泊まったかどうかなんて、いちいち確認できないことだから、疑わしいのは同じなのに」


「そうだね。けれど、君は彼氏に対して従順すぎる。
彼氏は、自分の思い通りになるはずの君が、自分の意にそぐわない行動をとることを、良しとはしないだろう。
飼い犬に手を噛まれたような気持ちになって、きっと君を責め立てる」


「でももしそうなら、潔白の可能性が高いってことですよね?」


「まあ、そうなるね」



 その可能性は低いけど、という言葉が恋次さんの表情から覗えたけれど、ここはぐっと堪えることにした。


 それにしても、本当に人の心が読めるんじゃないだろうかって思ってしまうくらい、恋次さんの言うことには説得力があった。



「最後に三つ目のケースだ」


「はい……」



 急に恋次さんの表情が険しくなったのを察して、私の眉までハの字に曲がってしまいそうになる。



「彼氏がもうすっかり、浮気相手に本気になってしまっている場合だ」


「……」



 つい、緊張に耐えかねて、空のグラスを口元にやる。


 私は、口の中に飛び込んできた氷の一つを舌の上に乗せて、ぎゅっと唇を結んだ。
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