その恋愛は、恋愛ですか?
「この場合、彼がどんなタイプの人間か、によってリアクションが変わってくる。
もしも、平気で二股をかけられるような人間であれば、君のお泊りに対して特に詮索はしてこない。
お互い自由にやっていくということでいいんだな、と、自己解決してしまう。むしろ、罪悪感が薄れてスッとすることだろう」


「それはなんとなく分かります。
じゃあ、もしも、彼が平気で二股をかけられないような人であった場合は、どうなりますか?」


「彼は浮気相手に本気、という前提なわけだから、その場合は君と別れる大義名分を欲しがっているはずだ。
3年も同棲した仲だ。
そう簡単に別れられないってのは分かってるはずだからね。
だから、君が外泊をした理由が、浮気であってほしいと思うだろうね。
となれば、きっとしつこく尋ねてくる。
浮気したんだろう、ってね。あるいは、無理やりにでも君が浮気したということして、怒ったふりをして完全に出ていくだろう」


「そんな……ひどい」


「けど、彼氏が浮気相手に対して本気だったとしても、完全に出ていくことは、今のところ有りえないと僕は思っている」



 その言葉に、少し安心してしまう。


 けれど、それが有りえないという理由が分からない。



「なんでですか?」


「出ていけば生活に困るから、さ。
だから君に対する興味が失せても、生活のためにちょいちょい戻ってくる」


「それこそ……ひどいです」


「問題は、『出ていくとなぜ生活に困るのか』だ。
本当なら、新しい恋人の家に転がり込めばいいだけの話だからね」


「単純にお金が無いからじゃないんですか? 
彼、ほとんどバイトしてないですし」


「まあ、その可能性もある。
ついでに言うと、新しい恋人には彼を養うほどの余裕がないのかもしれない。けど……」



 恋次さんは急に黙り込んで、何かを考え始める。


 そしてやっと顔をあげると、「ひとつ聞いてもいいかな?」と私に問いかける。



「なんでしょう?」


「田辺って子は、アパートで暮らしてるっていってたね」


「はい、そうです」


「そのアパートに彼氏が長居しちゃまずい理由、思い当たらないかい?」




 そう言われて、私ははっとしてしまった。


 いや、ゾッとしたという表現の方が正しい。
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