その恋愛は、恋愛ですか?
お泊りセットを手に葉子先輩のアパートに来た。
時刻は深夜の1時を回っている。
「いらっしゃい、ヨリ」
先輩はすっかり着替えてメイクを落とし、Tシャツにハーフパンツといった格好で迎えてくれた。
アイメイクを落としても、変わらず大きな瞳と、しっかり生えている整った眉毛が羨ましい。
「お邪魔します。本当に、ご迷惑をおかけします」
私が玄関先で頭を下げると、「いいから早くあがんな」といって廊下の奥で手招きをする。
突き当りの部屋まで行く途中、左右に4つの扉があった。
一つはたぶんトイレで、もう一つは洗面所やお風呂かな。
突き当りの部屋はダイニングだった。
そこには収納いっぱいの立派なダイニングキッチンがあって、逆側の間仕切りの向こうには和室が覗いていた。
多分3LDKというやつなんだとおもう。
「こんな広いアパートに独りで住んでるんですか?」
思わず尋ねると、先輩は「ちょっと前までは男と住んでたんだよ」と、ため息をついて笑った。
「す、すいません。変なこときいちゃいました」
「おいおい、謝るなよ。そこは普通、どんな彼氏だったんですかぁ?とか、なんで別れちゃったんですかぁ?とか、喰い付くところだろう」
「す、すいません……。
その、誰かと住んでいるなら、私が泊まりに来たら迷惑じゃないかと思って……つい」
「だから謝るなってば。
今となっては独りでここに住んでるのも話のネタにしてるくらいなんだから。
まあ、そういう気ぃつかいーなところが、あんたの良いところでもあるけどね」
先輩はそういって、大きくて空っぽの冷蔵庫から、ペットボトルのお茶を二つ取ってきてテーブルの上におく。
「まあ、座って一息つきなよ。あ、荷物はそっちの和室に投げときな」
「あっ、はい。ありがとうございます」
言われた通り、和室の入り口に荷物をおくと、ダイニングテーブルの席に着く。
「しっかし、悪かったね」
先輩は隣に座るなり、申し訳なさげに言った。
「えと、何がですか?」
「恋次さんのことだよ」
「?」
私が首を傾げていると、先輩は「気にしてないならいいけど」といってペットボトルの蓋を開ける。