その恋愛は、恋愛ですか?
「多分、彼はまだアパートに戻ってないと思いますから、私がいなくなったことに気付いてないと思います」



 彼がアパートに戻るのはいつも昼ごろ。


 きっと昼過ぎには心配してチャットを送ってくる……のかな?



「まあ、今日は彼氏のことは忘れなさいな。あと、スマホ禁止ね」



 葉子先輩はそういって私の手からスマホを取り上げると、電源を落としてコンビニのビニール袋の中に放り込んで、その口を縛ってしまった。


 私は慌てて先輩の腕にすがりついた。



「こうでもしないと、途中で彼氏から連絡がきたら、あんた帰りたくなるでしょう?
 あんた、今晩もここに泊まるのよ?」


 ……おっしゃる通りです。


 彼から「どこにいるの?」とチャットが入ってきただけでも、私は気が気ではなくなってしまうだろう。



「わかりました……」


「ほら、とりあえずレンさんからもらった宿題でもやってなさい」



 葉子先輩はそう言ってペンをテーブルの上に置く。


 と同時に、テーブルの上に置いてあった先輩のスマホが振動を始めた。



「ひょっとして、先輩も元彼からとかじゃあないんですか」



 私が冗談交じりに頬を膨らますと、先輩は「そうかも」といって席を立つ。



「ちょっと電話してくるわね」



 先輩はそう言って、さっさとリビングを出てしまった。



 うー、なんかずるい。



 私はテーブルの上のペンを手に取ると、膨らんだ頬はそのままに、例の宿題を始めた。
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