その恋愛は、恋愛ですか?
 その日は不安な気持ちが拭いきれなかったけれど、先輩が私を楽しませようと色んな話をしてくれたおかげで、なんとかのりきることができた。



 そして、ついに月曜の朝。



「それじゃあ先輩、お世話になりました」



 玄関先で改めて頭を下げる。



「私もひっさびさに楽しかったよ。それに……寂しくなかった。こっちこそありがとね」



 私はそのときに初めて気が付いた。


 こんな広いアパートで、独りで生活をするなんて、寂しいに決まってる。


 自分だって彼氏と別れたばかりで辛いはずなのに、こんなにも私を気遣ってくれて……。


 強い人って、きっとこういう人のことを言うんだ。



「今度、お礼に手料理を作りにきますね」


「あっはは。通い妻みたいだな」


「先輩が旦那さんなら、悪くないです。なんて」



 私がそういって目を細めると、先輩は急に不安げな顔をして問いかける。



「ヨリ、一人で大丈夫? 私も仲介しにいこうか?」


「いえ、大丈夫です。ちゃんと自分で、言いたいことを言ってきます」


「……そっか。でも、何かあったらすぐ電話、だよ?」



 正直、泣き出してしまいそうだった。


 そして気が付いた。


 誰かに大切にされたのが、久々だってことに。


 
 優しくって、嬉しくって。


 数か月前までは、圭介といるといつもこんな風に、胸が暖かかった。



「私、きっと仲直りしてみせます」



 失いたくない。


 絶対に、あの頃に帰るんだ。


 大丈夫、この3年間で積み重ねた思い出や約束は、きっと私たちを裏切らない。



「いってきます」



 私は、精一杯に微笑んで、先輩のアパートを後にした。
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