その恋愛は、恋愛ですか?
 自宅へと向かうバスの中で、私は恋次さんの言葉を思い返していた。



 彼が潔白の場合は、私のお泊りを堂々と責めるはず。


 彼が浮気をしている場合は、それとなく、細かく探りを入れてくる。


 そして、彼が浮気どころか、本気の恋をしている場合……。


 私が浮気をしたと決めつけてくる。


 もしくは、全く気にする様子も無く、一切咎めない。



 お願い、ケイちゃん、私のお泊りを堂々と責めて下さい。


 けれど、浮気をしたと決めつけて、別れを切り出したりしないで下さい。



 そんな矛盾に満ちた思いを胸に、私はついにアパートに到着する。


 そして、先輩に言われた通り、ここで自分のスマホを取り出す。



『相手がどんな状況だったのか、分からずに話すのは不利だから、自宅についたら電源を入れなよ』



 その言いつけどおり、バスの中では電源を入れるのを我慢した。



 スマホの画面に鮮やかなアニメーションが繰り返し表示されたあとで、やっと待ち受け画面が映し出された。



 私は恐る恐るに1021と入力をして、ロックを外した。



「そんな……」


 いつまでたっても、その画面の端には、チャットを受信したことを示すアイコンが姿を現さなかった。


 まったく連絡がなかったってこと?


 いや、落ち着こう。


 元々、ケイちゃんは私のお泊りを責めにくい状況にあるはずなんだ。


 きっと、私が友達と遊んでいるとしたら、邪魔をしたら悪いと思って、チャットを送信しなかったに違いない。



 いいよ。


 そんなこと、この扉を開いてしまえばはっきりすることなんだから。




 私は意を決して鍵を差し込んだ。
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