サヨナラからはじめよう
もしかしたら、マンションの前であいつが待ち構えているんじゃないかと内心怖かった。
でもあいつはいなかった。
ほっと胸を撫で下ろすと、大量の残飯をゴミ置き場に捨てて会社へと向かった。




「ちょっと涼子、何なのその顔は・・・」

会社のエレベーターに乗り込もうとしたところで菜摘に声をかけられた。
やっぱり。何か言われるだろうとは覚悟していた。

「今は何にも聞かないで・・・」

眼鏡をかけているとはいえ隠しきれていない酷い顔と、意味深な私の言葉を聞いた菜摘はしばらく何かを考え込む素振りを見せた。

「・・・・よし、今週末こそ行くよ?」

同期会のことだ。
飲んで余計なことは考えずにパーッと楽しめという友人としての気遣いだろう。

「行くっ!!飲んで飲んで飲みまくってやるっ!!」

「お~、あんたのそれ久々にそれ聞いたわ」

友人のありがたい提案に乗っかって、今はただそれだけを楽しみに気合いを入れ直した。
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