サヨナラからはじめよう
激しく動揺する私にカナさんは静かに告げた。


「司は浮気なんか一度もしたことはない。全て彼がでっちあげた作り話。・・・彼に浮気なんてできるはずがないの。だってあなた以外の女性に興味も関心も皆無だったんだから」


・・・手が震える。
あまりの事実にどうそれを受け止めればいいのかわからない。


「あなたが泣いて怒った時には彼は幸せそうだった。涼子がそれだけ自分の事を思ってくれているんだって実感できるんだって。私はすぐにやめないと取り返しがつかないことになるわよって何度も忠告した。でも彼はやめられなかった。自分を止められなかった。・・・・・そして最後にはあなたを失った」

「・・・・・・」


ポタポタと手のひらに大粒の涙が落ちてくる。
この涙はどういう意味をもつんだろう。
怒り?悲しみ?喜び?
・・・・わからない。
自分ではもう何もわからない。


「彼はひどく落ち込んだ。でも私は慰めはしなかった。だって自業自得だから。失うべくしてあなたを失った。彼には当然の報いだった。・・・・でも、あなたを傷つけた一端を私も担っていた。あの時ちゃんと彼を止めるべきだった。・・・・それをしなかった私も同罪なんです。・・・・・本当にごめんなさい」

そう言うとカナさんは立ち上がって頭を下げた。

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