サヨナラからはじめよう
「・・・どうぞ」

今度はカナさんがようやく落ち着きを取り戻した頃、私はハンカチを差し出した。
彼女はハッとして私を見ると、それを受け取ってまた泣き出してしまった。

「あ゛、あ゛り゛がどお゛~~~!!!」

言葉にならない言葉を発しながら彼女は泣いた。
私はその姿に思わず笑ってしまった。
本当に友達思いの素敵な人なんだなって伝わってきたから。
司にはこんな友達がいるんだってわかったら・・・少し安心できた。








「・・・・じゃあ、今日はわざわざありがとうございました」

あれから、お互いが完全に落ち着くと店の外へと出た。
私はカナさんにあらためてお礼を言うと、彼女は複雑そうな顔で私を見た。

「・・・・涼子さん、本当にもう無理なの・・・?」

「え?」

「・・・・あいつとのこと・・・」

私は思わず視線を逸らした。
正直、あんな事実を聞かされて動揺しないわけがない。
実は一度も浮気なんかしてなかっただなんて。

・・・でも、それでも。
彼が私を傷つけたことに変わりはないのだ。
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