サヨナラからはじめよう
ついに始まった展示会には、午前中から予想よりも多くのお客様が来場した。
ブースの一部では職人さんによる実演も行われており、会場内は大いに盛り上がりを見せた。

売り上げもこちらが期待した以上の成果を上げることができ、
贔屓目なしでも今日は大成功だったと言えるのではないかと思う。




「三国さん、今日はすっごく良かったわよ!大成功じゃない!!」

すっかり夜になり、全ての作業が一段落したところで齋藤さんが駆け寄ってきた。
私は思わず彼女の体に抱きついてしまった。

「齋藤さん~~!!!ここまでできたのも齋藤さんのおかげですっ・・・あ、ありがとうございますぅう~~っ・・・・」

既にズビズビ涙が止まらない私は周囲の目も考えずに泣き崩れた。
齋藤さん、スーツに鼻水つけてごめんなさい。
でも今だけは許してください。

「ふふっ、三国さんは本当にこの展示会に懸けてたものね。あなたのその情熱が今日を成功へと導いたのよ。自信を持って」

「あ、ありがとうございますっ・・・うわ~ん!!」

人目もはばからず泣き続ける私に、齋藤さんだけじゃなくてその場にいた人が全員笑っていたことを知ったのは、もう少し先の話だ。
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