サヨナラからはじめよう
「凄い・・・・!私の理想通りの建物ばかり。今までこんなの見たことないです」

「そうでしょう?私も初めて見たときに凄いインスピレーションを感じてね。あなたもきっとそうなるって確信したのよ」

瞳をキラキラさせながら雑誌に夢中になる私に齋藤さんは嬉しそうに言った。

「一体どんな人が作ってるんですか?」

「それがねぇ、最近その業界では急激に人気が高まってる話題の人らしいのよ。まだ若い人みたいなんだけど、和と洋の絶妙なバランスを操る建築デザイナーとしてあちこちに引っ張りだこみたい。・・・ほら、このページに載ってるでしょ、この人」

そう言って齋藤さんが示した場所を見る。





その瞬間呼吸が止まった。





「・・・三国さん?どうしたの?」

そこを見て目を見開いて固まってしまった私を見て、齋藤さんが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
何か言わなければと思うけれど、体が震えて言葉にならない。
雑誌がカタカタと揺れている。





「司・・・・」




ようやく絞り出せた声は耳をすましても聞こえないほど小さく掠れていた。
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