サヨナラからはじめよう
「中村君、本当にごめんね。・・・・そしてありがとう」

「まだそのセリフは早いですよ。涼子さんがどっちを選ぶかはわからないんですから。あくまで俺は全てを話しただけであって、あなたを諦めたわけじゃない。だから最後の最後まであなたが俺を選んでくれるってそう信じてますから」

「中村君・・・」

「でも選ぶのはあなたですよ、涼子さん。自分が心から笑えると思う場所へ行ってください。ちゃんと答えが出るのを待ってますから」

彼の優しさにまた涙が出そうになる。
奥歯を噛んでそれをグッと堪えると、目尻を拭って頷いた。

「うん。もういい加減逃げてばかりなのもやめるよ。・・・ちゃんと自分で答えを見つけてみせるから」

「はい」

中村君も満足そうに頷くと、それからはまたたわいもない話で盛り上がった。



そうして一日を彼と過ごすと、夕方には自宅へと帰ってきた。
家に入った私は脇目も振らずある場所を目指した。
どんどん足を進めて目的の場所まで辿り着くとピタリと足を止める。

しゃがみこんでゆっくりそれを手に取るとあらためて見つめた。




一度も開けることのなかった青い封筒を。


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