サヨナラからはじめよう
「はぁはぁはぁ・・・・涼子・・・・・・・俺、」

「・・・そんなに走ったら」

「え?」

「そんなに走ったら下の人に迷惑でしょ?心配しなくても私は逃げないから。
・・・・・今度こそちゃんと話を聞くから」

「涼子・・・」

まさか私の方からそんな言葉が出てくるなんて夢にも思わなかったのか、
司は驚いた顔で私を見ている。
そして何度か深呼吸をして乱れた息を整えると、その端正な顔を再びこちらに向けて話し始めた。

「涼子、まずは謝らせて欲しい。記憶が戻ったにもかかわらず君を騙していて・・・本当にすまなかった」

そう言うと司は深々と頭を下げた。

「俺・・・君に謝らなければならないことがいくつもあるんだ」

下げた頭をゆっくりと上げると、切ない顔でそう告げた。

「俺は昔も君のことを散々傷つけた。君が泣いて苦しんでるのを知っていながら・・・何度も同じ過ちを繰り返してしまった。こんなことを言われても今更ってわかってる・・・でも俺は」

「聞いたよ」

「え?」

「昔のこと、少しだけ。・・・・カナさんから」
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