サヨナラからはじめよう
「・・・・・・・・・・・」

あまりにも熱い視線に思わず俯いてしまう。


あんなに苦しい思いをしたんだ。
いくら実際浮気してなかったとはいえ、当時はそう思わされていた。
それをわかった上でこの男は私を傷つけ続けた。
それなのに実はこうでしたから許してください、もう一度やり直しましょう?


冗談じゃない!
ふざけんなっ!!!




・・・・そう思うのに。
思ってたはずなのに。


いつの間にかそんな感情はどこかに消え去っていて。


この家を見れば、彼の表情を見れば、
・・・そして今私の手に握られている物を見れば、
彼が口にしていることが嘘偽りない真実なんだって痛いほどに伝わってくる。


私のことが好きで、好きで、どうしようもないほど好きで。
弱い自分と上手に向き合うことが出来なくて。
だからこそあんな道を選択するしかなかった。

そんなどうしようもなく不器用な彼を・・・・・


私は嫌いになることなんかできないんだ。

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