サヨナラからはじめよう
「・・・・・・・・今さらだよ」

長い沈黙の後でやっとのこと絞り出した声は驚くほど掠れていて。
放った一言で司の肩がビクッと動いたのがわかった。
今にも泣きそうな顔で私を見ている。


「・・・・涼子・・・」


「・・・・今さらだよっ!なんで?ねぇなんで?3年以上も付き合ってて、いくらだって本当のこと打ち明けるチャンスはあったじゃん!話してくれれば私はちゃんと受け止めたよ?私、本当に傷ついたんだよ?辛かったんだよ?悲しかったんだよ?ボロボロになったんだよ?それを今さらやり直そう?愛してる?ふざけんなっ!!」

私は手に持っていたものをカウンターに置くと司の元まで走った。
そして目の前にある胸を思いっきり拳で叩いた。
何度も。何度も。何度も。

「バカっ!クズっ!弱虫っ!おたんこなすっ!」

これでもかとまるで子どものように罵倒の言葉を繰り返しながら。

「その通りだ」「俺が悪い」「本当に悪かった」

その度に司は何度も何度も謝罪の言葉を口にして。

気が付けば私の目からは大量の涙が零れ落ちていた。
司は辛そうな顔をしながらも私から決して目を逸らすことはなく、
時折涙を拭おうと手を上げてはグッと握り拳をつくってそれに耐えていた。
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