サヨナラからはじめよう
ゆっくりと体を離すと、私の手に握られたグラスを掴んでカウンターに置き、
司はそのまま手を伸ばして私の頬にそっと触れた。
その手は少し震えているように感じる。

「涼子。過去の過ちはこれからもずっと重く受け止めて生きていく。もう二度と涼子を傷つけるようなことはしないと誓う。・・・・だから、だから俺のところに戻ってきてくれないか」

少し潤んで見える漆黒の瞳が真っ直ぐに私を射貫く。
その瞳から目を逸らすことは許されなくて。
頬に触れた手は燃えるように熱を帯びていて。
その全てが私の心を震わせていく。

「・・・・・・・嘘ついたらタバスコ100本飲ますから」

「わかった」

「・・・・・・・浮気したらちょん切ってやるんだからね・・・!」

「どんなことをしたって構わない。でもそれ以前にそんなことはもう二度とない」

バカみたいなことを言ってるのに、真剣な眼差しで即答する姿に何故か泣けて。
気が付けばまた涙が零れていた。

「幸せにしないと許さないんだかっ・・・・!」

最後まで言い切る前にきつく抱きしめられていた。

「絶対に幸せにすると誓う。涼子・・・二人で幸せになろう」

言葉にならない代わりに震える手を恐る恐る司の背中に回していく。
その瞬間、私を抱きしめる司の腕に更に力が込められたのがわかった。
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