始まりの手紙、終わりの手紙。
「あいつ...なんか落としてってんじゃん...」

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その後何事もなく家に着いた。


のだが、






「ないないない...」








手帳が、無いのだ。






今日は美容室に寄ってその時に手帳で学割利かしてもらって、
その帰りに青坂公園のポストに寄って...

その時に落としたのかもしれない。

あんなやつと、駄弁ったりしなければよかった。
ベンチなんか座らずに真っすぐ家に帰って落ち込めばよかった。

今日は後悔ばかり募り憂鬱な気分だ。

「あぁ...もう散々...」

泣きそうになる。

嫌なことばかり起きると。

「自分はダメな奴なんだ」

「どうして私ばっかりこんな目に...」

今そんな言葉だけが頭の中を泳いでいる。

そんな重たい空気の中をぶち破るような軽快なメロディー。

「メール...?」

視界が滲むほど溢れた涙は一筋すぅっと輪郭を描いてフローリングに落ちた。

確認ボタンを押さないと鳴り止まないように設定してあるメロディーはまだ流れ続けている。

携帯へたどり着き、開くと



...知らないアドレスからだった。




今度は不安になるような言葉が頭を過ぎって行く。

《 ストーカー》



《 脅迫》



《 殺される》




それでも明るい考えをしようとした。

誰かがアドレスを変更したのかもしれない。

それとも、よく来る子供だましなチェーンメールとか。

不安と期待が半々のままメッセージを確認する。








【手帳おちてた。】










期待が不安に押しつぶされて、冷や汗が出る。

手帳には念のためアドレス、番号まで書いてあった。

見られたのだろう。中身を。

こんな悪いことに利用されるために書いたわけじゃないのに。

~♪~♪♪

またメールだ。








【あ、ストーカーじゃないから。
さっきの公園で話してた人です。】









ストーカーじゃない。

よかった。

気持ちが軽くなった。

今までの重たい荷物がなくなったような。

急いで返事をする。

【拾ってくれてありがとう
返してくれない?】

すぐに返事は来た。

【いいよ、まだ公園にいるから
来て。】
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