不思議な森のドングリ
暖かい日差しを受け、自然と目が覚める。
半開きの目をこすりながら、木で出来た窓を開け放つ。
すると、大量の日差しが待ってましたと言わんばかりに部屋に溢れる。

今日もまた、変わりのない清々しい朝だ。


木の根と地面の間の僅かな隙間の中にある我が家を後にし、いつもの様に散歩に出掛ける。
僕の毎朝の日課だ。

『よう、誰かと思えば抹茶みてーな顔のドングリじゃねーか』

屈託の無い笑顔で人のイヤミを平然と述べながらこちらに近付いてくる足音。
彼は狐の白狐だ。
白狐とは、その名の通り、白い毛並みをしている狐の事だ。

『誰が抹茶だ!誰が!』

いつもの如く激しく抗議するものの、コイツのこのからかいが止んだ事は一度も無い。
流石の俺もいくら言っても無駄だと思うが、先に折れてしまっては認めた事になる気がしてやめるわけにはいかない。

『え?誰って、お前のことだよ?』

『え?じゃないよ!なんで『当たり前じゃん』みたいな顔してんの!?』

『当たり前だからだけど?』

『当たり前じゃないから!僕抹茶じゃなくてドングリだから!』

『朝からギャーギャー騒ぐなよ、迷惑だろ』

『お前のせいだろうが!』

あまりにふてぶてしい物言いに無駄とわかっていてつい噛み付いてしまう。

『大体なぁ…!』

『あ、ドングリ後ろ。危ないぞ』

さらに小言を言おうとすると白狐がそんなことを言ってくる。
話題を逸らそうとしたってそうは行かない。そんな古典的な手に引っ掛かるかバカめ!

『その手には乗らない!お前はそうやっていつも俺をバカにしてギャァァァーーー!!!』
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