ウェディングベルが聞こえる
親友と幼馴染
親友でルームシェアしている菜々子が星也と付き合い始めて半年になる。
美森が幼馴染である星也に、片思いをしている菜々子の気持ちを伝えて、二人の恋のキューピッド役を務めた。
仕事一筋である星也はこれまで女とは縁はなく、丁度タイミングよく菜々子から恋の相手を知ってここぞとばかりに、美森がこの二人の恋愛に手助けした形となり。
「な~んか、腑に落ちないんだよなぁ」
星也が代表を勤めるオフィスで一緒にいた同僚の章太が、幼馴染ながらもその代表の部下をしている美森に告げた。
星也は自ら外回りに出ていてオフィスにはいない。
彼が一念発起で立ちあげてまだ間もないく、これら三人でしか勤めていない小さな会社だ。
「何がよ」
美森がキョトンとした表情で自分のデスクにいる章太へと訊ねる。
「星也さんと菜々子さんのカップル」
「どうしてよ」
「だってさぁ、何か仕事仕事で星也さん、ほとんど菜々子さんに構ってないじゃん。すれ違いまくってるし」
「まぁ、確かにねぇ。そうだ、ここは恋のキューピッドでもあるこの美森さまがあの二人のデートのお膳立てしようかな」
「恋のキューピッド、ねぇ」
章太は後頭部で手を組んだ姿勢で、白々と他人事のようにはしゃぐ美森を見やった。
「聞いて美森。私、星也さんからデートに誘われちゃった」
「そりゃそうよ。だってあんまりあいつがそんな素振りを見せないから、私がバーンと星也のお尻を引っ叩いてやったのよ」
「え、美森の根回しなんだ」
「あ、もしかして、何かまずかったかな」
「ううん。本当にありがとう。美森のおかげよ」
どこか言葉の端々に微妙なニュアンスを残しながらも、美森へと満面の笑顔を見せる菜々子だったが。
デートから帰って来るなり菜々子は、泣きながら美森に告げた。
「元々私とは合わなかったのよ。最初から気付いてた。ここは潔く諦めるわ」
これを聞いて美森は猛然と、夜遅くまで一人オフィスで仕事をしている星也の元へと乗り込んでいった。
「別れたってどういうことよ。菜々子泣きながら帰ってきたのよ」
「別れを先に切り出したのは、向こうの方だぞ」
「えっ」
「そもそも彼女とは合わなかったんだ。あいつに言われた。いつも無口なくせに口を開いたかと思えば仕事の事で、しかもそこに居合わせている美森のことしか話さないから、一緒にいても辛いだけだと」
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