恋愛奮闘記



「あの日もそんな廃れた気持ちであの店に行ったんだ。ただ髪を切りに行こうって思って。
だけど…その日から俺の考えは180度ひっくり返った。初めての感覚に戸惑ったし、驚いた」



私と…同じだ。
私もその日、初めての気持ちに戸惑った。理由は早坂さんに一目惚れしたからだったけど。



「だけどそれから、怖くなったんだ。どうしたら良いかわからなくなった。
俺は今までいい加減な恋愛しかしてこなかったから…そんな俺が誰かを大事に出来るのか、傷付けずにいられるのか。何より、自分が嫌われることが怖かった。
そんな時、矢野さんが俺に言ったんだ。
誰にでも必ず四季がある、冬が終わったら絶対春が来るんだ、って」

「あ…」



早坂さんが誰も好きになったことがなかったと話してくれた時、悲しそうな顔をして欲しくなくて言った言葉だった。



「あれ、結構響いてさ。…嬉しかった。俺にそんなこと言ってくれる人がいるんだって」



手首を掴まれていたはずの手はいつのまにか、お互いの手のひらで繋がっている。
彼がぎゅっと握るから、私も同じように握り返した。




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