恋愛奮闘記



どうしてこの人は、私がして欲しいことがわかっちゃうんだろう。



「矢野さんは会いたくなかった?」

ぶんぶんと首を横に振る。

「会いたかったけど…迷惑かけたくなくて」

「…何それ。迷惑とか思わないから」

「え…」



だって早坂さんの仕事に支障が出るのは嫌だから。休日出勤までしてただでさえ疲れてるのに余計に疲れさせたくないし、ゆっくり休んで欲しいから。



「矢野さんは全然わかってない。あのさ、今日俺がどれだけ楽しみにしてたと思う?朝から上司に散々今日はご機嫌だなって言われたわ。
矢野さんはわかってない。俺がどんなに矢野さんを好きか」

そう言って身を屈めて軽いキスをする。



「…行こう?」

差し出された手をきゅっと握る。

「…私も、早坂さんが思ってるよりずっと、好きですよ」



こんなに嬉しい言葉をくれるこの人のことを、会う度に好きになっていく。
昨日が最上級に好きだと思っていても、今日はそれを簡単に超える。



繋いだ手を引かれながら、二人で歩き出した。




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