恋愛奮闘記
家の最寄り駅近くにある居酒屋に入った。
時間も遅いので軽めのメニューを頼み、乾杯した。
「今日も遅くまでお疲れ。忙しかった?」
「あ、早坂さんこそお休みの日にお疲れ様でした。忙しいのは嬉しいんですけどちょっと失敗してしまって…」
「あるよなーそんな日。俺もこないだ仕事でありえないミスして一日ヘコんだ」
「早坂さんでもミスとかするんですねー」
「するする、俺そんなすごい奴じゃないし」
今私は猛烈に緊張している。
何故かと言うと…
「あ、あの!」
「ん?何」
「り、り…、」
「…り?」
「…りんごジュースってありますかね…」
「…あるんじゃない?」
早坂さんのことを名前で呼ぶチャンスを伺ってるから。
いざ目の前にして呼ぼうとすると変に緊張してしまって上手くいかない…。
頭の中の練習では呼べるのに口に出すのはすごく難しい。
「あ、その酒なに?うまそう」
「サングリアです。よかったら、り…早坂さんも頼みますか?」
「…うん。いや、それ一口ちょーだい」
そう言って私の飲みかけのグラスに口をつける。