恋愛奮闘記
「え…」
「俺、矢野さんのこともっと知りたい」
信じられない。夢みたいだ。
「今度、仕事帰りにでも飲みにいきませんか?」
背の高い彼を見上げる。
「矢野さん?」
早坂さんが顔をのぞきこんでくる。
顔が赤いのが恥ずかしくて、
目を合わせられなくてうつむく。
すると、自分の携帯を出して私の顔の前で揺らした。
「お願い」
その声の切なさに思わず顔を上げた。
彼の顔も少し赤いように見えた。
私が携帯を出すと、アドレスを打ち込んでくれた。
「また、絶対連絡するから」
そういって彼は帰っていった。
しばらくその場に突っ立っていた私は、のろのろと部屋に帰り、のそのそとお風呂に入り、布団の中で声にならない叫びを上げたのだった。