恋愛奮闘記
「矢野さん」
その日の営業後。
今日来たお客様のカルテを確認していると、岩佐くんが話しかけてきた。
「なに?」
「あのー…髪切って欲しいんすけど…」
「え?いいよ!いつ?今から切る?」
「出来れば…」
「おっけー!そういうのは遠慮なく言ってよー。いつでもタダでやってあげるんだから」
「すいません。ありがとうございます」
岩佐くんは2年前からこのお店で働いている。
よく気がつくし、努力もしてるし、お客様にも気に入られている。
だから私も仕事する上ですごく助かっているし、スタイリストになる為に出来るだけ協力してあげたいと思う。
岩佐くんをシャンプーして、カットし始めた。
「急に切るなんてめずらしいね。なんかあるの?」
「実はね、俺、彼女が出来て」
「ぇえっ!?もう!?
こないだ別れたばっかじゃなかったっけ」
「まあ、そーなんですけどそーいうことで。」
どーいうことだよ!
どうやらこの人もモテる類の人らしい。
スタイリストになったら女性のお客様がたくさん来るのだろう。
「その彼女がね、短髪が好きらしくて…じゃあバッサリ切ってやろうかなと」
「えー、彼女が切れって言ったから切るの?」
なんだか岩佐くんらしくない気がするけどなあ。
いつもオシャレに気をつかってて、自分のこだわりも結構あるタイプだと思ってたけど。