恋愛奮闘記
「違いますよ、矢野さん」
え?
「彼女が切れって言ったから切るんじゃなくて、彼女の好みを知った俺が、自分から切りたいと思ったんです」
自分の…意思、ってこと?
「俺が、彼女の理想に近付きたいから、ですよ。俺、今の髪型結構気に入ってたんだけどなあ。なんのためらいも無いんすよ」
相手のせい、じゃなくて
相手のため、に?
「彼女のために、自分を変えたくなったんすよ。俺、女々しいっすかね。」
岩佐くんが照れ笑いしながら言う。
ああ、そうか。
きっと、恋ってこういうことなんだ。
相手を想って、その相手のために自分から何かをしていく。
普段なら出来ないことも、その人のためなら迷いなく行動できる。
見返りを求めるでもなく、その愛情を惜しみなく与える。
それを受け取った側も、また愛情を捧げていく。
そうやって、積み重なっていくのかな。