恋愛奮闘記
橘さんが顔を覗き込んでくる。
「え…や、矢野?どうした?まさか知り合いだったとか?」
やばい、上手く返せない。
とっさに言葉が出てこない。
どうした、私。
その人とは確かに初対面だった。
なんだろう、今からその人と1時間関わると思うと息苦しくなってきた。
…心臓、もつかな。
カルテを書き終わったタイミングで近寄り、そこで初めて私はその人に声をかけた。
「ご来店ありがとうございます。本日担当させて頂く矢野と申します。よろしくお願いします」
声は震えてないだろうか。
上手く笑えているだろうか。
そんな私の気持ちを落ち着かせるかのように、その人はふわりと笑った。
「こちらこそよろしくお願いします。遅くにすいません」