恋愛奮闘記

橘さんが顔を覗き込んでくる。

「え…や、矢野?どうした?まさか知り合いだったとか?」

やばい、上手く返せない。
とっさに言葉が出てこない。
どうした、私。



その人とは確かに初対面だった。

なんだろう、今からその人と1時間関わると思うと息苦しくなってきた。

…心臓、もつかな。



カルテを書き終わったタイミングで近寄り、そこで初めて私はその人に声をかけた。



「ご来店ありがとうございます。本日担当させて頂く矢野と申します。よろしくお願いします」

声は震えてないだろうか。
上手く笑えているだろうか。



そんな私の気持ちを落ち着かせるかのように、その人はふわりと笑った。



「こちらこそよろしくお願いします。遅くにすいません」


< 7 / 200 >

この作品をシェア

pagetop