『…好きでした、それからごめんね。』
勉強に集中できるように音楽はインストゥルメンタルを中心に映画のOST等の歌なしの曲を聞いていた。
不意に大好きな映画『ニューシネマパラダイス』のクライマックスシーンで流れる曲が耳に響いてくる。
(あぁーやばい、やばい…)
そう思うのに私はパブロフの犬の如く、自分の意志とは関係なく流れ出る涙を止められない。
(ヤダ、教科書もノートも濡れちゃう…)
慌ててハンカチを取り出そうとしていたら目の前にタオルが突き出されて驚きに顔を上げると上杉君が立って居て
何と言っているのか?口をパクパク動かしている。
慌ててイヤホンを外したら
「…どうした…体調悪いの?」と気遣ってくれる
「…ちっ違うの…音楽聞いてたら自然に涙が出て…」と言ったら
上杉君はイヤホンを耳に入れて「あぁー分かる…」とニッコリと微笑んだ。
そんな上杉君の傍には怒りに震える拳を握り込んだ由美が居て
「上杉君…もういいかな?」と催促してイヤホンを返してもらう。
「ハンカチ持ってるから大丈夫…ありがとう」と言ってタオルも返したら
「…うん、分かった」って少し寂しげな表情をした上杉君がタオルを掴んで離れて行った。